コンテンツ創出型ベンチャー「TOKYOTOON」社に見る コンテンツ産業の未来と働き方改革の理想形

2018年12月1日


アニメやゲームのコンテンツを基軸に、新事業を創出するベンチャー企業として業界で注目され、急成長している「株式会社TOKYOTOON http://tokyotoon.jp 」の代表取締役 木村裕之様に、コンテンツ産業の今後の方向性や働き方についてインタビューしました。

ゲーム開発とアニメ放映を軸に、コンテンツ事業を次々に自社創出

―――本日はありがとうございます。まずTOKYOTOON社の事業や会社の特徴について教えてください。

 

木村様(以下敬称略) 弊社は前身となる事業を3年程続けた後、2018年に法人設立しました。「ノラと皇女と野良猫ハート(通称『ノラとと』https://nora-anime.net/ 以下略称で表記)」などのアニメ・ゲームを自社制作し、それを中心とした様々な関連コンテンツや事業を総合的に創出する企業である、と位置づけています。

昨年はゲームを原作としたTVアニメを自社単独出資で制作しました。そして関連したグッズ販売や音楽配信などを複数のチャネルで推進し、大規模イベントやキャンペーンを開催しています。

またここ1年は、コンテンツによる地域活性化事業として、会津鉄道とのラッピング列車運行やイベント開催等のコラボレーション事業や、周辺地域の事業者との共同でのグッズの生産流通を始めています。

 

 

「コンテンツへの投資」ニーズに対応する、革新的な「コンテンツ事業創出」モデル

―――創業から数年で、自社でコンテンツを創出し、多数の事業を立ち上げるというのは凄いですね。東京オリンピックを控え、コンテンツ産業が日本の底力として見直されている今、新しいモデルではないかと感じました。

 

木村 ありがとうございます。おっしゃる通り、アニメ・ゲームのコンテンツの創出を柱として、コンテンツを活かした事業を自社で複数の領域に創出し続け、コンテンツの力で高付加価値化していく、というのが基本的な考え方です。

 

最近の国内向けのアニメやゲームのコンテンツビジネスは、効率化を図るため基本的には「期待や予約を集めてコンテンツのリリース時に一時的・爆発的に売り上げる」という形であったと思います。ゲームであればリリースから1週間が最大の売り時だ、ということが常識だと思われていました。

 

弊社では、これは違うのではないかと考えています。ファンになってくださった方は、好きなアニメやゲームの世界が発売後にも広がってほしい、また友達との共通の話題になってほしい、誰かや何かと繋がるきっかけになってほしいという気持ちを感じています。アニメやゲームのコンテンツの購入は「消費」ではなく、作品やクリエイターやコミュニティに対する「投資」だと捉えられているのではないでしょうか。

 

―――なるほど、ゲームもずっと参加するようなソーシャルゲームもありますし、好きになったアニメなどのグッズを集め続ける人も多いと思います。

 

木村 はい、コアとなるゲームやアニメをリリースした後も、積極的に魅力的なキャンペーンや続編やメディア展開を作り続けることによって、作品を持続的な広がりがあるものにできると考えていますし、現にそうした方針がファンの方、クリエイターの双方に良いメリットを生み出しています。

 

コンテンツを一時的なものだと捉える考え方が、たとえばゲーム・アニメ業界のクリエイターの労働問題だったりと、様々な歪みを生み出していると考えています。自転車操業的に新作の数を揃えることがコンテンツ業界のセオリーですが、クリエイターのアイディアや体力が無限にあるわけではなく、そうしてクリエイターが疲弊していくことも常態となっています。

 

会社は「コンテンツを利用して個性を発揮する場」 有給休暇は最初から20日、働く時間も場も自由

―――なるほど、御社の事業のやり方でそうした問題が克服できれば、コンテンツ産業による経済の発展成長ということにも本当に繋がりますね。アニメ・ゲームクリエイターの過重労働問題のお話もされていましたが、TOKYOTOON様の組織体制などについて教えて頂けますでしょうか。

 

木村 弊社では、社員はアルバイト社員も含めて13名程度ですが、持続的に関わっている業務委託の方も入れると、全体で30名以上になってきます。また、常に強く連携している関係会社もあります。そうした方々含めて、作品ごとにひとつの共同体だと捉えています。

弊社は、そうした方々に「コンテンツを利用してそれぞれの個性を発揮して頂く場」だと捉えています。一定のルールはありますが、個人の自由や裁量を最大限に尊重しないと多数の事業は作っていけません。通常の意味での組織の捉え方がちょっと当てはまらない部分はありますね。

―――なるほど、素晴らしいですね。人事制度的な面、たとえば労働時間に関わる制度や休暇制度、評価制度や給与などはどのような形で運営されているのでしょうか?

 

木村 社員の休日休暇は、土日と祝日のほか、入社時点で年次有給休暇は20日支給しています。有給は完全に消費するように話をしています。労働時間については、ベースとしてはフレックスタイム制で、14~17時のコアタイムを設定してはいます。ただし、あくまでこれは最初の契約という意味であって、個人のパフォーマンスが最大限に発揮できるよう、個人に働き方を最適化する方針です。

たとえば、クリエイティブに関わる方で夜型の方などがいた場合、要望があって会社側でも納得ができれば真夜中に出社して仕事をするのも完全に自由な形にしたいです。現に、夜型で働きたい希望があった社員について、専門業務型の裁量労働制でそういう形にした方もいます。またテレワークについても、家庭の事情などでそちらを選択する人もいますし、ツールは会社で提供します。自宅に居続けて仕事をすることも自由にできます。ただし現状としては、通常14時くらいには出社する社員が半数くらいはいます。

 

評価や賃金制度は、半期ごとにやりたい仕事や成果について個人ごとのコミットメントを決めてもらい、それが遂行できているかをよく話し合う形にし、給与等に反映させる形にしています。ただし、評価や賃金制度は色々試している最中です。給与水準の考え方として、業界の平均的水準よりも必ず高い水準で維持することを決めています。

 

 

「働き方改革」とは、企業がコアとなる価値を強く創出すれば必然的に行きつくもの

―――非常に革新的な人事管理だと思いました。多様な働き方を受け容れて、自由に個人の生産性を最大化する、ということは、国の施策で行われている「働き方改革」そのものだとも感じます。

 

木村  個人の創造性を最大限に発揮してもらわないと、弊社の商品の性質上、品質の向上や多様な展開ができないことを強く感じています。

経営視点で言うと、型化して量産してなるべく経費を下げるような方向で事業運営をしたいという欲求も出てきます。しかし、そういう方向性だと大きな投資が必要なゲームやアニメなどではビジネスとしては良くても、作品として良いものを作ることができず、長期的に収益を下げるので、基本的に行わないとことを決めています。多様な作品を生み出すこと、また1つの作品を自社で多くの形に広げられることが弊社の強さであり、今後の発展に繋がるのです。

ただし、そうした形で経営ができているのはやはり、作品がお客様に受け入られ、強い基盤ができつつあるからだと感じています。働き方改革の話などをお聞きしていると、確かに弊社が行っている方向性と同じだとよく感じます。しかし、働き方改革には経営サイドの事業運営の考え方の話があまりありませんね。

 

 

経営視点で言うと、社員の生産性を自由に発展させる、強い核心の価値、コアとなる価値をまずは創り出すことが絶対に必要だと思います。それさえできれば、あとはなるべく個人に最適化した自由な場を作れば、本当に生産性は上がります。弊社では、コンテンツビジネスにおいて、また広く社会的な例として、このことを実証していきたいです。

そして、TOKYOTOONで今後もそうした状態を維持できるよう、コンテンツ創造の楽しさを忘れず、関わる方1人1人の可能性を100%信じる方針で、会社を運営していきたいと考えています。

 

(東京都社会保険労務士会 HR NEWS TOPICS編集部 松井勇策)