①リモートワークを当たり前に!労働革命で日本を変える株式会社キャスターの働き方改革

2020年1月25日


家や外で仕事ができるリモートワーク。こういった働き方があるとは言われるものの、多くの企業では導入はされておらず、大手企業においても試験的に導入しているといった段階です。
今回はこのリモートワークという働き方を当たり前にするという信念のもとに、今年度に厚生労働省が主催する「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」において特別奨励賞を受賞された株式会社キャスター(以下、「キャスター」という。)の中川社長にお話を伺いしました。

1.キャスターについて~「出社」・「定時」が当然という働き方への疑問~

―――本日はよろしくお願いします。まず、キャスターの設立からこれまでと、事業概要についてお伺いできますでしょうか。

中川様(以下、敬称略) 弊社は5年前の2014年に設立しました。現在、本社は宮崎県西都市にあるほか、サテライトオフィスを札幌・東京・宮崎の3か所に設置しています。設立当時は私一人でしたが、今ではメンバー700名ほど働いており、ほぼ全員がリモートワークの勤務をしています。700名のメンバーの分布は全国の人口分布に似たような形で全国津々浦々在住しています。事業内容としては、主にオンラインアシスタントというものになりますが、これは企業が行っている業務のうち、比較的切り出しやすい秘書・人事・経理・webの運用などを弊社が引き受け、メンバーが対応しているというものです。

―――700名のメンバーがリモートワークというのにはかなり驚きですが、こういった働き方を取り入れた理由は何かあったのでしょうか。

中川 これまでは会社がどれだけ家から遠くても出社が求められ、また午前9時から午後6時と固定された時間に働くなど、決まった働き方が求められていました。一方で、このルールの上で働けなくなった人やその会社を辞め、地方の田舎に住まざるを得なくなった場合、能力は変わらないのに、これまでの待遇を維持することが困難な場合がほとんどでした。せっかくスキルのある方が、働き方や働く場所を変えただけで、収入が下がったり、職種を変えなければならないといったことは大きな損失であると思っています。このような方々の中でも、以前と同じようにスキルを活かして働きたいと思うことは当然のことです。そのため、そういった方々に弊社で活躍してもらいたいと考え、「完全リモートワーク可」としたキャスターを設立しました。

(東京にあるサテライトオフィス。社員が自由に使用することができる。本日はWEB会議のため、1名のみ利用中。最大でも5名ほどしか使用できない。)

2.全国での採用活動~設立当初から応募が殺到~

―――現在、700人ものメンバーが働かれていますが、設立当初から現在まで、人材確保の面で苦労された点はありますでしょうか。

中川 設立当初、地方の求人媒体に掲載したところ、毎月数百名の応募がありました。これだけ聞くと他社と差別化を図ったのではと思われるかもしれませんが、設立当初から採用活動自体に何か工夫をしたということは特にありません。ただ、弊社が求人を掲載したことで、他社と差別化を図れた点は2つあります。それは待遇とリモートワーク可ということです。どういうことかと言いますと、弊社は地方都市で求人を掲載する際も、東京と同等程度の待遇で求人を掲載しました。そうしたところ、ほぼ全ての求人誌において弊社は時給が最も高い企業として掲載されます。そうすると、それを見た求職者は「リモートワーク可と書いてあるし、とりあえず応募してみよう」となる。その結果、設立当初においても、知名度に関係なく毎月数百名の応募が来ました。今では掲載するだけで毎月数百~2千名ほどの応募があります。

―――地方の求職者にとって東京のキャスターという会社やリモートワークという聞きなれない言葉に抵抗はなかったのでしょうか。

中川 確かに地方では都会より人間関係が密なこともあり、「○○さんが引きこもりになった」など言われることもあったようです。一方で、働きに出てるわけでもないのに、生活水準が低いわけでもないと、何をしているのかと関心を持つようになります。そうすると「キャスターで働いているようだ」ということや「インターネットで仕事をしているようだ」といったことをだんだんと知るようになります。弊社としても、地方の求職者に安心をもって応募してもらいたいと思い、札幌市と宮崎市にサテライトオフィスを設置しました。もともと地方には企業が少ないですから、行政も企業誘致には積極的です。オフィスを設置することで、行政も積極的に広報をしてくれますし、市民の安心感にもつながります。結果として、求職者の応募数が増えるきっかけとなりました。

―――応募者を全国から募集するといったことで、スキル面等、違いはありましたでしょうか。

中川 あまり感じていないというのが正直な感想です。スキル面で足りないと感じる時というのは、採用者数名に対して、応募があまりないといった状況の時だと思います。弊社は設立当初から数百名の応募があり、その中から数名を採用していましたので、応募者の中に求めるスキルを持っていた方は多かったように思います。


(中川社長(左)と筆者)

3.リモートワークで働くメンバーの教育や管理方法について

―――全員がリモートワークで働かれていますが、新規採用者の教育やサポートはどのようにしているのでしょうか。

中川 まず、新規採用者には3か月の試用期間を設け、その間はシスターという先輩社員がサポートします。もちろんシスターも新規採用者もリモートワークで行っていますので、相談などはチャット等で行っています。

―――リモートワークの場合、ちゃんと働いているのかといったことが見えづらいと思いますがどういった方法で管理しているのでしょうか。

中川 まず業務の処理方法が大きな特徴になると思いますが、弊社は受託した業務を細分化し、その一つ一つにマニュアルを作成しています。また、マニュアルの作成だけではなく、細分化した業務一つ一つにかかる処理の時間をこちらで算出しています。そのため、会社側からみると、全てのタスクにおいて情報の処理量が見えている状態となります。この処理量は個人のものだけではなく、チームや部署全体のものも作成していますので、全体の進捗を確認することもできるようになります。
例えばAという仕事を与えた際に、通常の会社であれば、上司が処理にかかる時間などを把握し、管理していくかと思いますが、弊社の場合は、細分化された業務ごとにマニュアルがあり、また、そのAという仕事にかかる時間をあらかじめ算出しているため、機械的に処理が円滑に進んでいるかどうかが判断されます。

―――この方法は設立当初からしていたのでしょうか。

中川 はい、設立当初からこの管理方法で行っていました。ただ、当初は時間管理をするシステムもなかったので、グーグルのスプレッドシートに入力してもらい、集計していました。しかし、集計した時間を見てみると、想定していた時間を大幅にオーバーしていました。分析してみたところ、業務自体にかかる時間はほぼ想定通りだったのですが、スプレッドシートに入力する作業に多くの時間を費やしていることが発覚し、非効率だということに気づきました (笑) 。それ以降は、自社で開発を行い、現在では目に見えないまでに比率を小さくすることができました。

リモートワークを当たり前に!労働革命で日本を変える株式会社キャスターの働き方改革に続く(1/27掲載予定)

(執筆 東京都社会保険労務士会 HR NEWS TOPICS編集部 峠 秀二)