東海地方の製造業での外国人の採用と雇用の注意点 株式会社東陽ワークの事例
2019年12月6日
2019年4月の出入国管理法の改正で新しい在留資格「特定技能」が創設されたことにより、より多くの外国人労働者が日本で就労することが予想されます。
今回は、株式会社東陽ワークにお伺いし、執行役員の北村様、総務部部長の大澤様に外国人雇用について伺いました。
株式会社東陽ワーク
——本日はよろしくお願いいたします。まず、御社での外国人雇用の現状、募集・採用について教えてください。
北村様/大澤様(以下、敬称略) 当社では、1,400人程度の外国籍の方を雇用しています。多くは人と人との繋がりによる採用で、既存スタッフの方の紹介か、地域の外国人コミュニティに我々がアプローチをすることで、外国籍の方と企業を繋げています。採用基準は日本人と同様に人物評価です。唯一日本人と異なる点といえば、配属先の選定に日本語能力が影響することです。製造業では日本語が必要な仕事と必要のない仕事の切り分けができているので、日本語ができないから不採用ということはありませんが、日本語ができれば選択肢は広がります。
——時給や労働条件等で日本人労働者との違いはありますか?
北村/大澤 東海地方の製造業の時給は1,000円~2,000円位と幅広いです。給与や労働条件は、派遣スタッフを活用される企業(派遣先)と、派遣元である当社との契約条件により決まりますので、外国籍だからといって日本人労働者と異なることはありません。なお、外国籍の方は自分名義でアパートを借りられないことが多いため、直接賃金ではないですが会社名義でアパートを契約し、貸与をすることは必須になります。
——昇給の制度はどうですか?
北村/大澤 昇格については、外国籍スタッフの中から東陽ワークの正社員登用を実施しています。全体で5%位、30名弱の優秀な外国籍スタッフの方が正社員になっており、外国人の部長職も誕生しています。このようなモデルになる方が社内にいることを現場の派遣スタッフの方にも見ていただきます。
—–外国人労働者を雇用する場合、日本人労働者の雇用とは違った課題等がありましたら教えてください。
北村/大澤 一言で言えば相互理解です。外国人スタッフ側には、日本企業、上司や同僚になる日本人の考え方や特徴を理解してもらう必要があります。対して我々人材会社は、それぞれの国籍の方の考え方、文化を勉強し、派遣先の企業様にも都度お伝えして理解していただく必要があります。外国人労働者として働く側と活用する企業側の相互理解があると、指示の出し方や労働者側の指示の受け方が変わりますし、外国人労働者の方がより力を発揮しやすくなります。
これは我々としてはあたりまえだと理解していますが、企業側に理解し実行いただくことは簡単ではありません。企業側は、派遣社員に自社の色に染まってほしいのですが、それが外国人には馴染まないこともあり、結果ルールが守られなかったり、思ったような成果が出ないことがあります。
—–想定外の事象が起きることもあるでしょうか。
北村/大澤 派遣先で廃棄物置き場の重量計を外国人スタッフが持ち去っていた例がありました。鎖も表示もないので捨ててあると解釈しただけで、悪気があったわけではありません。その方の国や育った環境では不用品だから持ち帰っていいことになるけれど、日本人の感覚だとそれは会社の資産であり、そこがズレることになります。
また、外国人労働者の一時帰国も課題の一つです。例えばブラジルの方であれば12月~2月がバケーションで、一時帰国の希望が集中します。これは企業側としては非常に受け入れ難いのですが、ダメといえば結局不満足状態になり、従業員の定着に影響してしまうことになります。
外国人労働者が日本の発展に貢献している
——一部の企業や日本人に、外国人労働者が安い労働力という認識を持たれている方がいます。
北村/大澤 労働の対価は、働く場所や仕事内容、現状の労働力の需給バランスで決まるので、外国人だから安い労働力というのは大きな誤りです。今の日本では、法律をはじめ「働く」ということの考え方が大きく変化していますから、安い労働力という認識は完全に過去のものですし、そのような考え方で外国人労働者の方々に活躍いただくのは非常に難しいと思います。
—–外国人労働者は製造業の発展に大きく貢献していますね。
北村/大澤 特に東海は日本の中でもものづくりが盛んで、製造業での外国人活用が進んでいるという特徴があります。愛知、岐阜、三重の三県で製造業の出荷額は60兆円で、製造業に携わっている方が120万人位います。そして、東海の製造業で働いている外国籍の方は6万人で、全体の5%を占めます。これは非常に大きな数字だと思っています。大手メーカーの二次三次の下請会社で多くの外国人労働者が頑張って働いていて、その5%の方々がいなければ部品の一つも供給できないわけです。全国的に外国人労働者の依存度は高いですし、今後も間違いなく、外国人活用ができなければ日本産業も地域の産業も成り立たない、当然発展もできないということになります。
—–OJTなどで工夫している点はありますか?
派遣先の現場で「一人目の先輩を作る」ことを非常に重要視しています。その人の考え方や背景を良く知る最初の一人の先輩ができれば、先輩が自国の言葉で足りない部分を補えますし、その後二人目三人目と外国人の方でチームを作っていくことで、最終的に成果を出してもらうことができます。成果を出すという点では、仕事の与え方ひとつでモチベーションの持ち方が変わりますので、外国人の方に適切に目標を持ってもらい、結果として日本人よりも高い実績が残るというのはよく目にします。
—–モチベーションの持ち方や目標というのは、具体的にはどのようなものでしょうか。
北村/大澤 外国人労働者は、自分の仕事を人に取られることに対して危機感を持っている方が多いように感じます。できている先輩や日本人がいると、それを自分が超えることがモチベーションになる人が多いです。また、日本人も同じかもしれませんが、誰かに見てもらえている、ということもとても大事です。
—–期待されているとか、自分が試されているということでしょうか。
北村/大澤 そうですね。最初の3か月位はどうしても習熟度が足りないのですが、そこで放っておくと、あと少しというところでずっと留まってしまいます。そういう時に、誰かがその人の作業を横で観察してアドバイスをするなど、あなたの作業に関心があるよというのを見せると、その人はとても成長をするんです。単純な作業だからと渡してそのままではなく、我々のような立場の人間や管理する側の人間がその人の作業に興味を持つことで、その人のモチベーションがアップして、それが成果につながる気がします。
受入れ側である日本企業側が、日本産業に外国人労働者の力がなくてはならないことを理解し、働く外国人それぞれの仕事に関心を持つことが大切だと感じました。東海地方では特に製造業の現場で、外国人労働者が実績をあげた成功事例がたくさんあります。ものづくりが盛んな東海地方ならではのお話を聞くことができ、とてもためになりました。北村様、大澤様、貴重なお話をありがとうございました。
(執筆 東京都社会保険労務士会 HR NEWS TOPIS編集部 永井知子、勝田由紀子)]]>