外国人留学生の採用を通じ、未来への可能性に目の開いた国へ 早稲田大学キャリアセンターからの提言

2018年6月16日


総務省の情報通信白書によると、日本の生産年齢人口は、少子高齢化の進行によって1995年をピークに減少しており、総人口も2008年をピークに減少に転じています。

これに対して、厚生労働省が公表した平成29年10月末現在の外国人雇用状況の届出状況のまとめによると、外国人労働者数は 1,278,670 人で前年比18%増となっており、5年連続で増加しています。

 

このような中、外国人留学生の就職の実態について、日本で最も留学生の多い早稲田大学の、キャリアセンターのセンター長である佐々木ひとみ様にインタビューを行いました。

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―――本日はありがとうございます。早稲田大学キャリアセンター様では、学部生・大学院生・卒業生の就職の支援を広く行っていらっしゃいますが、外国人留学生の就職状況に関して教えてください。

 

佐々木(以下、敬称略)まず、経済産業省のデータでは大学卒業後に日本で就職を希望している外国人留学生は、全体の6割を超えています。それに対して、実際に日本で就職できた外国人留学生は、37%となっています。勿論、中には大学院に進学した留学生もいますが、日本での就職がかなわず、国に戻ったり別の外国に行ったりする留学生もいまだ多いのが現状です。

 

―――そうなんですね。外国人留学生にとって日本での就職が難しい原因はどこにあると思われるでしょうか。

 

佐々木 ひとことで言いますと、企業側の採用におけるニーズと、日本の国際化を考えた場合のあるべき姿、そして留学生側の持っている特性に、根深いギャップがあるからだと感じています。これは広い視点でみれば今後の日本の針路にも関わることですので、特に、企業側に強くご理解頂きたいと思っています。

 

―――具体的にお聞かせください。

 

佐々木 採用時に多くの企業から、まずは日本語ができること、というご要望をいただきます。率直に言いますと、この日本語の要件が厳しすぎるのです。たとえば、日本語能力検定※N1程度では日本で働くことは難しく、実際には敬語なども使えるネイティブ並みの日本語力が求められることも多いです。

 

さらに、日本語力だけではなく、日本の文化にどれだけなじんでいるか、日本社会に対してどれだけ適応力があるかを求められる場合が多いのですが、そこでは、集団内の同調性や昇進昇級の考え方など、日本的慣習や風土への高度な順応が必要だとする企業が多いのが実情です。

 

外国人留学生の中で、出来れば日本で長く勤めたい、役職にも就きたいと考えている学生は増えています。しかし、こういった企業側の要望は、時に彼らの文化や国際的な感覚と異なることも多く、適応できずにせっかく日本の企業に入社してもなじめずに、辞めてしまうケースもあります。

 

※日本語能力検定 外国人が日本語の知識と運用能力を測定する検定。N1~N5の5つのレベルがある。一番易しいレベルがN5で、一番難しいレベルがN1で、N1では高校生程度の読解力が求められる。

 

留学生の特性をつかみ、生かすことには大きなメリットがある

 

―――言語にしても、日本文化の適応にしても、求められる壁が内向きで、高すぎるということなのですね。

 

佐々木 日本語にしても文化への適応にしても、企業の側で、日本人と同質な形で働く、ということが強く前提になっているのではないかと感じています。そこよりもむしろ留学生を採用することの、本質的なメリットを考えて頂きたいのです。例えば早稲田大学に在学する留学生は、母国でも高いレベルの教育を受けてきた者が多く、バックグラウンドとして、親や親せき、友人など世界に強力なネットワークを持っていると言うことができます。また日本で学んでいる留学生は日本側の意向を理解し、また現地のニーズも理解できるので、現地との橋渡し役になってもらえます。たとえば不動産関係の企業で、外国人富裕層のニーズをつかみ、短期間で高い業績をあげた元留学生もいます。

 

このような優秀な人材を日本にいながらにして採用できるのは素晴らしいことです。企業の皆さんに、外国人留学生を補完的な労働力として捉えず、大いに自社の可能性を促進するものとして、もっと積極的に活用人材として考えて頂けるとありがたいです。

 

―――早稲田大学キャリアセンター様では、外国人留学生の就職に対して、具体的にどのような支援をしているのでしょうか。

 

佐々木 外国人留学生向けには、日英2言語で就職活動ガイドブックを作成したり、就職対策講座を開催したりしています。留学生を積極採用する企業の説明会を行うこともあります。その他では、留学生向けに就職イベントや企業の求人情報をお知らせするメールマガジンを配信したりしています。留学生と企業の間で少しでもギャップがなくなるよう、相互に理解が進展できるよう努力しています。

 

また、台湾・フランス・ドイツなどの在日商工会議所等と合同でイベントを行ったり、海外展開する企業の現地法人の採用情報を作成したりしています。日本語能力などの問題で日本で就職できない留学生が多く出てしまう現状を見て始めた施策です。

―――様々なサポートをされているわけですね。改めて、早稲田大学様としての、留学生への教育や、その後の就職への思いをお聞かせいただけますか。

 

佐々木 早稲田大学は、より国際化する世界の中で、少しでも学生にとっても良い学びの場となるよう、様々な国際的な対応を行っています。たとえば、すべての授業を英語で行うプログラムを持つ大学や大学院も増える中、早稲田大学でも英語だけで卒業できるプログラムが、学部では7学部、大学院では15研究科(一部コースのみも含む)あります。こうした工夫や、積極的なリクルート体制などもあり、国際的にも能力の高い学生が多く集まっています。

 

しかし、このままでは、そうした日本に深い興味を持った貴重な留学生が日本での雇用に活路を見いだせないことになり、将来的に、留学生が日本に集まらないことにも繋がりかねません。企業の側からも、少しでもオープンに自社の可能性を広げるような発想を持って頂けるとありがたいです。それが時代の流れでもあり、日本や世界の発展に繋がると思っています。そして、留学生採用をご検討頂ける企業の方には、ぜひ協力させて頂きたいと思っています。

(執筆 東京都社会保険労務士会 HR NEWS TOPICS編集部 永井知子)