中村屋の驚くべき働き方改革(1) ~社員の繋がりを深めることが大切

2018年3月31日


現在、日本全体で話題になっている働き方改革。革新的な取り組みを行っている企業として、株式会社中村屋の、執行役員 総務・人事部門統括の大野正美様へインタビューを行いました。

中村屋について・人の自由さを大切にする伝統企業・家族的な風土

―――本日はありがとうございます。まず、中村屋様についてお教えください。

大野(以下、敬称略) 株式会社中村屋は、1901年に創業し、菓子・食品の製造販売および飲食店の経営を行っております。平成30年に創業116年になります。日本で初めてインドカリーを発売したり、現在の日本人向けの中華まんなどを創ったのは当社です。また、明治終わりから昭和初期にかけて「中村屋サロン」と呼ばれた芸術家への支援活動を行ったり、インドの独立運動家を支援をしてきた歴史があります。人の感性や自由さを大切にし、社会の発展に貢献することは社是となっています。そのこととも繋がると思いますが、社内には家族のような雰囲気がありますね。

働き方改革とは、社員の繋がりを深めることだ

―――ありがとうございます。そうした風土の中での中村屋様の働き方改革について教えて頂ければと思います。

大野 当社では、昨年より働き方改革について検討を行ってきました。そうした中で中核になっている考え方は、働き方改革を行うためには、コミュニケーションを深めていくことが重要だということです。
働き方改革は生産性の向上ととらえられる場合もありますが、いずれにしても、多様な働き方に対応していくということが重要です。当社では、これを可能にするためにはどうすればいいのか?ということを検討してきましたが、最終的には、社員同士のコミュニケーションを深めていくことが最も重要であると思いました。

―――それは大変、特徴的な考え方ですね。なぜそういった考えに至ったのでしょうか?

大野 働き方改革には、長時間労働を抑制するなど、ルールを整備してコンプライアンス的に取り組む側面もあります。しかし、生産性の向上などは特に、ルールや仕組みの工夫だけでは、社員の誰かに負担を強いることになってしまう可能性が高いと思います。
生産性の向上というのは、みんなでよく考えて工夫する、一丸となってさらに本質的な課題を見つめる、ということであり、お互いの理解から始まることだと思うのです。まずは社内のコミュニケーションをよりいっそう多くし、より深く理解し合うことこそが最も重要だということに思います。

※写真はイメージです

施策の実効性を高めるために、対話の機会を創り出す

―――なるほど「働き方改革とは、社員の繋がりを深くすることだ」ということはほとんど聞いたことがないのですが、とても本質的で納得できる考え方だと思いました。具体的には、どのような取り組みが行われているのでしょうか?

大野 対話の機会を創り出すことをまず第一に行っています。また人事部で、全管理職を含めた全従業員との面談を行っています。当社は家族的な風土がありますが、さらに話す機会を積極的に設けることにより、社内の結びつきが強まったと思います。日々の仕事について思っていることや、感じている課題、より仕事の質を上げるために感じることや、日々の生活の中で感じていることなどです。さらに、色々と話す中で、労働時間の管理や、仕事の効率化の具体的な取り組みについて、こうした場で1人1人と話し合うことで、実効性が高まります。

―――1人1人が主体的に向かい合うことができそうで、すばらしい活動ですね。成果についてはどう思われますか?

大野 現在取り組み中でもありますので、定量的な成果についてはまだ出ておりません。しかし、労働時間の管理や業務の工夫など、今までと違う仕事の仕方がスムーズに受け入られていると思います。途中経過の成果としては、あまり現場に負荷を与えるような形でなく、ノー残業デーなどの施策が現場で採り入れられ、結果として生産性向上に繋がるような状態になってきているのが現状です。

多様な働き方を可能にする、繋がりを深める施策の可能性


―――なるほど、繋がりを深めることは、今後の働き方を考える上で根本的なものなのかもしれないですね。

大野 はい、たとえば、当社で働いている方の6割は非正規社員の方々です。しかし、働き方や職種が違うだけで当社の社員として、仲間であることはまったく変わりませんし、一緒に会社を発展させられることができればと思います。こうした中で、無期転換制度などの法律ができたことは、重要な機会だと思います。

―――確かにそうですね。

大野 そうした中で、コミュニケーションをまず増やし、繋がりを深めることは、今後の働き方を考える上で、前提になってくるようなことだと思います。非正規社員の方に対しても、よくお互いコミュニケーションをとっていくことで、当社の力を高めるものとなると思っています。非正規社員の方への対応のほかにも、障害者の方や、育児中の社員の方へも、相互理解を軸とした施策を進めています。
さて、そうした中で、コミュニケーションを深めるだけでなく、社員の全生活的な価値を高めるために、徹底したコンプライアンス施策を取ることが当社での方針の2つ目となっています。

―――貴重なお話をお聞かせ下さり、ありがとうございます。では次に、2つ目のコンプライアンス施策についてお伺いできればと思います。.

..中村屋の驚くべき働き方改革(2)に続く(近日公開予定)
(記事執筆・東京都社会保険労務士会HR NEWS TOPICS編集部 松井勇策)