日本の就職制度と留学生の採用 外国人雇用サービスセンター①

2018年11月6日


東京都新宿区には、外国人を対象としたハローワークがあります。
今回は、東京外国人雇用サービスセンターの室長である津田武彦様にインタビューを行いました。
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外国人向けのハローワークの必要性

―――本日はありがとうございます。まずは外国人向けのハローワークについて教えていただけますでしょうか。

津田(以下、敬称略)外国人向けのハローワークは、全国では東京と名古屋、大阪に設置しています。このうち東京では、東京外国人雇用サービスセンターと新宿外国人雇用支援・指導センターの2つがあります。これら2つのセンターの年間の利用者数は合計すると約1万5千人です。

―――東京外国人雇用サービスセンターと新宿外国人雇用支援・指導センターでは、対象となる外国人に違いがあるのでしょうか。

津田 就労活動に制限がある在留資格を持つ外国人と、制限がない在留資格を持つ外国人で対象を分けています。
日本に居住する外国人は、原則として出入国管理及び難民認定法(入管法)に定める「在留資格」を有する必要がありますが、この在留資格は大きく分類すると、

① 在留資格に定められた範囲で就労が認められる在留資格
② 就労活動に制限がない在留資格
③ 原則として就労が認められない在留資格

に分けられます。
このうち、①については東京外国人雇用サービスセンター、②については新宿外国人雇用支援・指導センターがそれぞれ対応しています。

① 東京外国人雇用サービスセンター
・ 日本で就職を希望する大学生、大学院生、専門学校生
・ 専門的・技術的分野の在留資格を所持している外国人
②新宿外国人雇用支援・指導センター
・ 日本人の配偶者等、定住者、永住者などの在留資格を所持している外国人
・ 資格外活動許可を受けてアルバイトを希望する外国人留学生※

※「留学」の在留資格は原則として就労は認められませんが、
資格外活動の許可を受ければ1週28時間まで就労することが可能です。
この場合、法例に違反する業務や風俗営業等の業務以外であれば、
職種に制限はありません。

―――東京外国人雇用サービスセンターの利用方法と受けられるサービスについてお聞かせいただけますでしょうか。

津田 まずは、センターにご来所いただき、登録していただく必要があります(大学生については3年生以上が対象)。
センターのサービスメニューは

① 求人情報の提供・相談・紹介
② 就職活動に関する個別相談
③ 就職活動を支援する各種セミナー
④ 在留資格について専門家からのアドバイス

などがあります。これらのサービスは日本語での提供になりますが、英語・中国語の通訳によるサポートが可能です※。
※通訳が不在の場合もあるため、あらかじめ電話で確認を取っておくとスムーズにサポートが受けられます。
個別相談では、応募書類の作成方法、面接についてアドバイスします。仕事探しの方向性や、志望動機の書き方についてなど包括的な指導ができるため、就職に関する予備知識がない状態でも心配ありません。
また、希望する仕事が、在留資格で認められた活動の範囲内であるか確認が必要なときには、「入管相談コーナー」で専門家によるアドバイスが受けられます。
通訳によるサポートや在留資格についてのアドバイスなどは、一般のハローワークにはない、外国人向けハローワークならではのサービスになります。

日本の就職活動の理解

―――まずは新卒採用についてお伺いします。東京外国人雇用サービスセンターでの新卒採用求人の傾向はどのようになっているのでしょうか。

津田 留学生が大学卒業後に日本の企業に就職するために取得する在留資格で一般的なのは「技術・人文知識・国際業務」です。この在留資格では、業種でいうと、サービス業や販売業・小売業などが多いです。職種やポジションでいうと、総合職、営業、販売、ITシステムエンジニアなどがあります。

―――企業が外国人に求めるスキルなどはどのようになっているのでしょうか。

津田 日本語力については、日本語能力検定※のN1レベルを求める企業が多いですが、案件によっては、N2~N3で可能なものもあります。
※日本語能力検定 外国人が日本語の知識と運用能力を測定する検定。N1~N5の5つのレベルがある。一番易しいレベルがN5で、一番難しいレベルがN1で、N1では高校生程度の読解力が求められる。

―――高い日本語力が求められるのですね。日本語力以外のスキルではどうでしょうか。

津田 新卒採用では即戦力を求めない代わりに、将来的な活躍を期待する「ポテンシャル採用」を行っている企業が多いため、留学生は「日本の企業が求める人物像」を理解しておく必要があります。年功序列制や終身雇用制などの日本独特の企業文化の知識も必要です。
東京外国人雇用サービスセンターでは、大学や専門学校等と連携して就職ガイダンスなども行っています。就職ガイダンスでは大学1~2年の学生も参加可能なため、日本での就職についての知識を早い段階から得ることができます。

―――大学1~2年からガイダンスに参加しておく必要があるのでしょうか。

津田 はい、日本の就職活動は外国と比較すると独特です。新卒一括採用が一般的ですし、大学生は3年生になるとインターンシップや企業説明会に参加するなど、具体的な就職活動を始めます。しかし外国人留学生にとって大学3年は学校の勉強に追われている時期でもあるため、日本の採用システムを早い段階で理解しておかないと、就職活動で出遅れてしまうのです。ですので、学生の方々については少しでも早く、大学生であれば3年時から具体的な就職活動に関連する情報収集を始めることをお勧めしています。また、大学1~2年の方々については、まだ早いとは思わず、就職ガイダンスにできるだけ参加していただくことをお勧めします。

―――企業に対してのアドバイスはありますでしょうか。

津田 企業に対しては、できるだけ多くの応募者と実際に会っていただくことをお勧めしています。書類選考で「日本語能力検定のN1」などで候補者を絞ってしまう企業も多いですが、実際にはN1を持っていなくてもコミュニケーションは十分に可能ですし、外国人ならではの発想力やネットワーク力で企業の業績アップに貢献することも多いからです。

近日公開する2に続く
(執筆 東京都社会保険労務士会 HR NEWS TOPICS編集部 永井知子)