国境を超えた人材交流を実現する技能実習制度 監理団体の最前線

2018年5月10日


2017年11月1日に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」が施行され、技能実習制度について改めて注目されています。今回は、外国人技能実習制度の創設時から積極的に実習生を受け入れており、優良な団体である公益財団法人 国際労務管理財団の理事長 池田節子様にインタビューを行いました。

公益財団法人 国際労務管理財団(IPM)のホームページはこちら

外国人技能実習制度とは

外国人技能実習制度は,国際貢献のため開発途上国等の外国人を日本で一定期間(最長5年)OJTを通じて技能を移転する制度で、受入れの形態には次の2種類があります。

① 企業単独型:企業等が海外の現地法人,合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施
② 団体監理型:非営利の監理団体(事業協同組合,商工会等)が技能実習生を受入れ,傘下の企業等で技能実習を実施

現在多いのは団体監理型(全体の96.4%)となっており、監理団体は海外の送出機関と連絡を取りながら技能実習生の採用や、技能実習生の入国後講習、受入れ企業の定期監査などを行います。受入れ企業(実習実施機関)では、技能実習責任者・技能実習指導員・生活指導員などを置いて、技能実習指導を行います。
2017年11月の外国人技能実習法の施行に伴い、技能実習計画の認定制度・監理団体の許可制度などの規制が設けられた反面、優良な団体に対しては受入れ人数枠や受入れ年数(最大5年)などの拡充がされています。

※制度の概略図。「IPM」は今回の取材先の団体名称。当該位置が、監理団体の役割を表す。

公益財団法人 国際労務管理財団について

―――本日はありがとうございます。まず、公益財団法人 国際労務管理財団が受け入れている技能実習生の国籍や、受入れ企業の地域や業種について教えてください。

池田(以下、敬称略)はい、公益財団法人 国際労務管理財団(以下IPMという)では、ベトナム、中国、インドネシア、モンゴル、タイ、ミャンマーなどの技能実習生や建設就労者を900人近く受け入れています。東京本部・仙台・名古屋・大阪・広島・福岡と全国規模で展開しており、常勤役職員が51名います。実習生20名につきスタッフ1名の割合を維持しながら、実習生に対して十分なサポートを心がけています。受入れ企業は、製造業をはじめ様々な業種を取り扱っています。
なお、2017年11月1日の技能実習法施行と同時に一般監理事業の許可(優良な監理団体として技能実習生を最大5年受入れ可能)と、同20日に介護職種の許可を受けています。2018年9月に中国から初めての介護職種の技能実習生を5名ほど受け入れる予定です。

―――ありがとうございます。IPMで技能実習生の受け入れに対して一番大切にしている部分について伺えればと思います。

池田 一番大切にしているのは、「実習生を泣かさない」ということです。技能実習制度については法令違反などの良くないニュースを聞くことが多いですが、IPMでは、技能実習法はもちろん、時間外手当の支払い・36協定の届出などの労働基準法をはじめとした諸法令を必ず遵守させるようにしています(※1)。
その他、制度上定められた定期監査とは別に、月に1回必ず企業訪問をして、技能実習が適切に行われていることを確認しています。
技能実習生を受け入れたいという申出を頂いた企業様に対しては、まず企業の方針や社長様の技能実習に対する考え方を伺うようにしています。技能実習の目的は国際協力・技術の移転であり、人手不足の解消ではありませんから(※2)、場合によっては技能実習生の紹介をお断りすることもあります。

※1:平成28年に厚生労働省が実施した監督指導結果によると、外国人技能実習実施機関の7割が労働基準関係法令に違反している。
※2:技能実習法では、技能実習を労働力の需給の調整の手段と誤認させるような方法で、受入れ企業の勧誘や技能実習制度の紹介をしてはいけないことになっている。

独自の日本語指導により帰国後に活躍できる人材の育成を実現

―――ありがとうございます。いまだ法令違反が多いといわれている技能実習制度で、法定遵守を徹底しているのは素晴らしいことだと思います。技能実習生の採用や受入れ後のフォロー体制については独自の工夫があるのでしょうか。

池田 技能実習生の採用の際には、本人だけでなく必ず家族とも面接をして、技能実習への意気込みや家族の協力体制なども確認し、ミスマッチのない採用を心がけています。
実習生が日本に入国したらまず入国後講習を行いますが、IPMでは六甲にある研修センターに専任の日本語教師や寮長夫妻が常駐し、実習生に対して日本語や日本での生活についての指導を行うようにしています。勿論1か月の講習だけでは日本語のマスターは難しいですから、その後はIPMオリジナル教材を使った通信教育により指導を継続しています。
生活指導では、清掃や共同生活、日本でのコミュニケーションの留意事項なども学べるよう、企業に配属された後にスムーズに実習に取り組める配慮をしています。

 

―――実習生のご家族や、生活へのマッチングまできめ細かく配慮された活動をされているのですね。ここまで徹底して、実習生の方の適正・適法な労働のあり方のために活動されている理由は何なのでしょうか?

池田 社会的な使命感のためです。今後日本は、海外の人々と今まで以上に良い関係になっていく必要があります。特に、外国人で日本で働かれる方は、日本の生活を経験し、勤労という最も重要なところで日本を理解するわけです。そこでもしも、良くない扱いをされたり、違法が横行している労働現場の実態があったら、日本に対して決して信頼を寄せることはないと思いますし、そういう日本の姿が広まってしまうでしょう。今後の日本や、国と国の繋がりを考えた時に、監理団体は大切な使命を持っていると考えています。

―――実習生が日本で技能実習を修了した後、本国へ戻った後はどのような活躍をしているのでしょうか。

池田 帰国した技能実習生は、日本で習得した技能を活かし、現地の日系企業に就職した人や、日本語教師になった人、技能実習生の送出機関を自分で立上げた人、起業した人など、様々な活躍をしています。IPMでは技能実習生に、日本語はもちろん日本の企業での仕事の進め方なども教えますから、その経験や知識が帰国後も役に立っているようです。技能実習生が帰国した後も連絡を取り合いますし、現地での結婚式に呼ばれることもあり、大変良い関係が築けています。

理事長 池田節子様

現地の送出機関や留学生・高校生とも積極的に交流

―――まさに、将来的な国と国の繋がりや、国際的なより良い世界を作ることに繋がっていっている成果ですね。IPMとしてさらに独自に行っていく活動などはおありですか?

池田 毎年4月にはベトナムや中国で、送出機関との連絡会議を行い、制度改正についての説明や質疑応答、意見交換などの機会を持つようにしています。また2016年からハノイ、ハティンで毎年、留学や技能実習を目指す現地の若者に対して人材育成交流会を開催し、留学生や高校生など約300名に参加して頂きました。こうした活動をより広げ、もっと実習生の方へのフォロー体制を拡充したいと思います。
現在の外国人の労働や、実習制度には、報道もされているように課題も多くあります。しかし当団体はそうした中で、誠実に実習生と向き合い、決して実習生を泣かせない、実習制度の本来の可能性と価値を、必ず実現していきたいと考えています。(近日公開する2に続く)

(執筆 東京都社会保険労務士会 HR NEWS TOPICS編集部 永井知子)

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