~入国前から帰国後まで~ 技能実習生を全力でサポートする監理団体

2019年11月26日


技能実習制度とは、人づくりを目的とした育成の制度です。
この制度の中で、送出機関の認定取り消し、監理団体の許可取り消し、技能実習計画の認定の取り消し、など技能実習制度がうまく運営できていない、不正な団体への取り締まりが多くなっています。
一方、技能実習制度の本来の目的である「人づくり、国際協力」を実行し、人間的な繋がりを重視して技能実習生のサポートをしている団体も確実にあります。
今回は、技能実習生の採用から帰国後の就労までを一貫してサポートする監理団体、AHRC事業協同組合の副理事長の浅川竜也様に伺いました。

AHRC事業協同組合

技能実習の効果を最大限にするための徹底した日本語教育

―――本日はありがとうございます。まず、AHRCの事業内容と特徴、また監理団体とは何かについて改めてお教えください。
浅川様(以下、敬称略)はい、監理団体とは実習生の採用や入国前・入国後講習の実施、受け入れ企業に対する監査・訪問指導などをする団体です。技能実習制度の中で送り出し機関や受け入れ企業と実習生との仲介の役割を果たしています。

―――なるほど、よくわかりました。AHRCの特徴は何でしょうか?

浅川様 AHRCは、ベトナム ハノイの送り出し機関と連携した教育サポートチームを日本語教育センター内に持っています。こうした機関を持っている監理団体はほとんどありません。
日本語の講習では、日常会話を中心とした日本語を徹底的に勉強します。AHRCで作成した毎週のミニテストなども行っており、モチベーションアップにつながっています。このような体制で日本語講習を行うと、技能実習生の入国後の日本語検定の合格率も格段に向上します。
技能実習に必要な専門用語も勉強すると、実習現場で即戦力になるため企業からも喜ばれます。

―――非常に手厚いフォローですね。なぜそこまで行っているのですか?

浅川 それは、実習生に対する徹底した人材育成と支援をするためです。こうした理念を実現するため、AHRCでは、送り出し機関任せにすることなく、技能実習生の育成のフォローを積極的に行います。

 

実習生の入国後も継続する充実したサポート体制

―――通常、監理団体は入国前講習にあまり介入しないところも多いので、AHRC様の方針は貴重だと思いました。日本語教育以外でも特徴はあるのですか?

浅川 AHRCが提携している送り出し機関では、技能実習生のキャリアカウンセリングなどにも力を入れており、さらにその内容や技能実習生の受講の様子をAHRCに毎週報告しています。
海外の送り出し機関では技能実習候補生に何かトラブルや問題があっても日本へ報告しないところも多いですが、AHRC、送り出し機関、受け入れ企業側との3者で密に連絡を取っています。このサポートは技能実習生の入国後も継続して行われるため、実習生たちにとっては心強い支えとなり、安心して技能実習に励むことができるのです。

―――すばらしい体制だと思います。他にも特徴があるでしょうか?

浅川 入国した後のフォロー体制をしっかり行うことだと思います。入国前講習は数か月間の講習ですから、この期間だけで日本語や日本の習慣などを完全にマスターすることは不可能です。日本に来てから、本格的な習得が始まると言ってよいと思います。これをあまりサポートしない監理団体も多いのですが、AHRCでは実習生が技能実習に安心して専念できるための企業サポートプログラムを実践することで積極的に技能実習生の環境整備を行います。

大きな成果の創出と、10年後、20年後の発展のための施策

―――今までのことは、どういった成果に繋がるのでしょうか?
浅川  入国前講習をしっかり行うと、技能実習生の受け入れ企業からは「実習生たちはとても仕事熱心・勉強熱心で、日本人のスタッフ以上の業績をあげている」という意見が聞かれるようになります。これは入国前講習にしっかり取り組むことで、技能実習生たちの向上心を引き出すことができるのです。受け入れ企業の理解もあると、関係者の思いが共有できたうえで、成果に繋がります。

―――技能実習生受け入れの経験が豊富な浅川様ならではのご意見ですね。貴団体の今後の展望を教えてください。

浅川 日本で数年間働いてもらうことだけが技能実習制度ではありません。日本で習得した技術を活かして、母国でキャリアアップできたときに、技能実習制度の目的が達成できたといえるのです。しかしながら帰国後に全然違う仕事をしている元実習生が多いのも事実です。
技能実習制度では実習生の帰国後も連絡を取り、送り出し機関等とも連携して、元実習生の就職の支援に力を入れるべきです。AHRCでは現在取り組んでいる海外事業を拡大して、帰国した実習生を積極的に採用し、活躍の場を広げるプロジェクトを展開しています。

―――実習生の就職の場の提供とは、技能実習制度の理念を実現した素晴らしいプロジェクトですね。

浅川 今後の日本の社会のことを考えると、アジアの周辺諸国と連携し、共に発展していくことが必要でしょう。日本と東南アジアやアジア全体との架け橋となるような活動をし、10年後や20年後を見据えて発展に貢献するべきです。そのための一歩として、AHRCでは技能実習制度を全力でサポートしていきます。

取材した社労士からひとこと 技能実習制度に対して社労士の果たす役割

技能実習制度では悪いニュースも多く聞かれるため、制度を廃止するべきだという残念な声も時々聞かれます。ただし、AHRCの例を聞くことで、社会保険労務士として技能実習制度がここまで発展できる、ということは大きな発見でした。
技能実習制度ではまだまだ課題が多いのも事実なので、技能実習制度を企業が適正に運用するための労務管理などは勿論、実習生の帰国後のキャリアアップの推進など、社労士ができることを積極的にバックアップしていきたいと考えさせられました。
(執筆 東京都社会保険労務士会 HR NEWS TOPIS編集部 永井知子)