物理的なオフィスからバーチャルオフィスへの移行
物理的なオフィスを撤廃して全員がリモートワークという体制になったソニックガーデン。全員がバーチャルオフィスで勤務するという体制になって、働き方はどのように変化したかをお伺いいたしました。
倉貫 一言でいってしまうと、「何も変わらない」ですね。東京のオフィスを撤廃する前と撤廃した後で、仕事の進め方や働き方は何も変わっていません。
朝バーチャルオフィスにログインして「おはようございます」と挨拶して業務を開始し、仕事でわからない事があればいつでも気軽に同僚と相談する。半年に一度の社長と社員のキャリア面談からちょっとした悩み相談までバーチャルオフィス内で行なう。これらは全てオフィス撤廃前から変わっていないので、働き方も特に変わりませんでした。
リモートワークでの人事労務管理について
—なるほど、それでは全員がリモートワークという働き方になったことによって、実際の人事管理や労務管理の面で問題は発生しませんでしたか?
倉貫 仕事の進め方や働き方が全く変わっていないため、人事管理や労務管理、マネジメントの面でも特に変わった事はないと思います。人事管理や労務管理に関する事は、ソニックガーデンの人事労務管理を担当する岩崎からご説明させて頂いた方が良いと思いますので、今から呼びますね。
といっても、別の部屋から呼んでくるのではなく、このPCから岩崎を呼んでオンラインで参加させて頂きます。
岩崎様(PC上)以下、敬称略 はじめまして、ソニックガーデンの岩崎です。人事労務関連を担当しております。

—お忙しいところありがとうございます。早速ですが、ソニックガーデンでは裁量労働制を導入されておられるのでしょうか?
岩崎 いえ、裁量労働制ではなく、フレックスタイム制を導入しております。コアタイムを設けないフレックスタイム制で1か月の所定労働時間のみ決めて、所定労働時時間を超えた場合は残業代を支払い、所定労働時間に満たない場合でも賃金の減額はしておりません。ソニックガーデンでは効率よく働く事が推奨されており、短い時間でも同じ成果を出せるのであればその方が良いと考えているためです。
—では、出社と退社、勤怠管理などについてはどのように管理されておられるのでしょうか?
岩崎 はい、出社はバーチャルオフィスへのログイン、退社はバーチャルオフィスからのログアウトとしております。勤怠管理については、バーチャルオフィスへのログイン時間などを元に自動計算するようにしております。ただ、バーチャルオフィスにログインしていても業務をしていない時間や、ログインしてなくても出張で働いている場合もありますので、自動計算された結果を本人が確認し、必要に応じて本人が修正するという方法をとっております。
—なるほど、リモートワークでフレックスタイム制ですが、厳密に勤務時間を管理されているのですね。それでは、ちょっと意地悪な質問になってしまって恐縮ですが、リモートワークだとサボる社員が多いというお話を聞くこともありますが、そのあたりはいかがでしょうか?
倉貫 経営者として正直に言ってしまうと、自己責任で働き方をコントロールした上で成果さえきちんと上げているのであれば、サボる、サボらないという事は些細な問題だと思っています。それに、リモートワークだからサボる、オフィスだからサボらないという事も一概に言えないと思います。オフィスで正面にいる人がPCに向かっていても、実はゲームをしていたりネットサーフィンをしていたり、仕事をせずにサボっている場合もあると思います。リモートワークでフレックスという働き方でも厳密に時間管理を行うのは、サボる事を心配しているのではなく、働き過ぎにならないように配慮するためです。
—ありがとうございます。話は変わりますが、採用関係で工夫している事などがあればお話し頂けますでしょうか?
倉貫 はい、工夫というか、じっくり時間をかけて採用をしています。応募から雇用契約を結ぶまでに大体1年半ほどかけています。また、面接は全てテレビ会議などのリモートで行っており、直接会うのは雇用契約締結時ですね。
—応募から採用に至るまで1年半とはかなり長いですね。その間に応募者が辞退してしまう事はないのですか?
倉貫 はい、もちろん辞退される方もおられますが、それはそれで構わないと思います。ソニックガーデンは、応募者と会社の双方がそれぞれ「この会社で一緒にやっていけるか」をじっくり長い期間をかけて見極め、お互いが信頼関係を築いた上で入社してもらう事が大切だと考えていますので、その間に、どちらかが「あ、これは何か違うな」と思う事があれば、そこで終了するのがお互いのために良いと思います。
—応募者の人物をじっくり見極めて入社してもらうという点では、普通の会社の採用と変わらないのですね。
倉貫 おっしゃるとおりです。ただ、面接をテレビ会議で行うので「テレビ会議での面接は嫌だ、どうしても直接会って面接して欲しい」という方ですと難しいですね。
—リモートワークというと、一般的には一人で働き、上司や同僚への報告や相談の時のみメールやチャットツールなどでコミュニケーションを取るといったような「孤独な働き方」というイメージがありますが、ソニックガーデンでのリモートワークはツールを活用し、顔が見えて雑談が出来るような環境を提供して「孤独じゃない働き方」であるという点が大きく違うのですね。
倉貫 そのとおりです。一緒に働くメンバーが集まる場としてのオフィスはやはり大切であり、お互いの顔が見えて様々な雑談が気軽に出来るという事は、チームで仕事を行う上でとても大切な事だと考えています。ただ、オフィスは必ずしも物理的なオフィスである必要はなく、雑談や相談が出来、常に働いているメンバーの顔が見える、仲間と繋がっているという気持ちが持てるのであればバーチャルオフィスでも全く問題無いと考えています。

今後さらに増えていくと思われるリモートワークという働き方について大きなヒントを頂きました。本日はどうもありがとうございました。
(執筆 東京都社会保険労務士会 HR NEWS TOPICS編集部 南雲大助)]]>