副業の進展と働き方の可能性 ㈱フクスケ社の副業活用による発展事例
2019年10月7日
平成30年に厚生労働省から働き方改革の一環として「副業に関するガイドライン」が出されました。
いま社会的に副業が大きく進展する時を迎えています。今回は、副業を活用・研究し、創業から3か月で組織を急激に発展させている 株式会社フクスケ 代表取締役 小林大介様を取材しました。
―――本日はよろしくお願いいたします。㈱フクスケ社は新しい企業だと伺っていますが、設立の経緯や事業内容、今後の方針などをお教えいただけますでしょうか。
小林様(以下、敬称略) 本日はありがとうございます。弊社は2019年7月に設立した企業ですが、それ以前の2ヶ月ほどは準備をしており、商品導入と試用をして頂ける企業や開発パートナーが順調に見つかり、計画通りに法人組織に移行しました。
現在は、実質は常時10人程度の業容でIT系ソフトウェア開発が主業務の企業となります。パッケージソフト開発と、導入やソフトにまつわる人事系コンサルティングを事業としており、主力商品は社名と同じ「フクスケ」という副業管理ソフトです。現在はα版がリリース直前で、導入が決定している顧客も複数います。導入コンサルの納品に移っています。
―――ありがとうございます。まだ設立してから2か月程度で短いと思うのですが、そこまでの体制が構築され、成果が出てきているのはなぜですか?世間では採用難であり、特にITエンジニアの採用は最も困難だと思います。
小林 それが当社のコア・コンピタンスなのですが、当社で働いているのは副業の社員です。当社の事業ミッションは世の中の副業の量と価値を最大化することです。当社自身にもそのミッションを課しており、大きな効果を発揮しています。
副業をしている社員の本業は様々で、大企業でエンジニアをやっていたり、フリーランスに近い社員まで様々にいます。そういった方のバックボーンや志向を把握して、業務をそれぞれ任せていくことで事業は効率的に運営できると思います。
また社長である自分は専ら、自社のソフトパッケージの導入のための広報・渉外・コンサルティングに従事しています。ソフト開発のプロジェクトマネージメントも、企業の管理職経験がある副業の方に任せることができ、十分に運営できています。
―――本当に革新的な企業の運営スタイルですね。メリットも非常に多いように思います。
小林 はい、行政からも副業の推進に関する様々な情報が出てきていますが、副業を推進したり利用していくことは、個人にとっても企業にとっても大変メリットが大きいことなのです。
社会的な価値以外に、次のようにまとめています。そして、こうしたメリットを体現できるような経営を行っていくことを決めています。
―――貴社以外でも、副業の推進は進んでいるのでしょうか?また、より副業を推進するために必要だと思われることや、副業の推進を通して目指したいことなどはありますか?
小林 企業の大小を問わず、副業を解禁する企業や、積極的に利用していこうとする企業はかなりのスピードで増え続けています。
しかしそういった企業で人事部等の管理部門に聞くと、どの企業でもコンセプトが先行している印象で、運用については試行錯誤中である企業がほとんどです。
課題として、まずは副業の管理の仕組みがないことが挙げられます。それは細かく列挙すると、
などということになると思います。
弊社では、こうした課題に対して、自社としては解決する手段を様々に開発しています。そして、そうした知見を世の中に広めていくことで、大きな価値を創っていくことができればと思います。
―――なるほど、副業に関する視界が大変クリアになりました。最後に、小林様の副業にかける思いや、今後実現していきたい展望などがあれば教えてください。
小林 私は社会に出てから、WEB・ソフト・人材系の企画管理職や人事系のキャリアを積んできました。働きがいのある企業ランキング3年連続1位をとったVOYAGE GROUPに新卒入社をしていたのですが、非常に自由な社風で、オープンに社外と絡む機会も多いものでした。
そうした中で、オープンに社外と関わっていくことの重要性や、多様な業務を行うことの重要性を感じてきました。また社外と関わる時に感じたのは、オープンさがない環境は、変えた方が良い場合が多い、ということでした。もちろんそれがしづらい事業体もありますが。
人事として痛感したことも共通しています。結局、人は自分の仕事やキャリアに主体性を持たないと自分の仕事への本来の面白さも見いだせず、企業視点で見ても生産性が高まらないということです。
最近、政策などの影響もあり、どのように生産性を高めていくかがよく話題になります。決定的に重要なことの一つは副業を適切に拡大していくことだと思います。
副業をより自由にし、個人として適切な情報やキャリア設計のもとに副業を行い、危険さや不適切さを軽減し、人材の流動性が高まる社会を創造していくことは、個人がより自由に力強く生きる可能性を高め、企業の生産性やイノベーション力を高めることに繋がるのは明らかだと思います。そういう社会の実現に尽力していくことができればと思います。
副業を活用することでここまで迅速な発展ができる、ということは大きな発見であり、今後の企業の在り方に対する重要なヒントではないかと思います。
その上で、副業制度を企業が運用するために、また個人の方が副業で安定的かつ発展的に働くために、社労士ができることは多いと考えられます。副業申請の制度の整備は重要ですし、個人の方々の多様な働き方のバックアップの必要性も高いと考えられます。社労士の役割というものについても考えさせられる内容でした。
(東京都社会保険労務士会 HR NEWS TOPICS 編集長 松井勇策)