東京産業保健総合支援センターに聞く 産業保健の新潮流・両立支援の今

2018年3月31日


ストレスチェック制度が施行され、健康経営等や労働時間管理等にも社会の注目が集まる昨今の状況を踏まえ、東京産業保健総合支援センター副所長 柴田昌志様に、産業保健全体の現状、センターとしての活動等についてインタビューを行いました。東京産業保健総合支援センターのホームページはこちら

東京産業保健総合支援センターについて

―――本日はありがとうございます。まず、東京産業保健総合支援センターについて、どのような機関なのか、どういった業務を行っているかをお教えください。

柴田(以下、敬称略) はい、東京産業保健総合支援センター(以下支援センターという)は、東京都医師会他、関係機関の協力の下、地域産業保健センター(以下地域産保という)と連携して、事業者、産業保健関係者の産業保健活動の支援を行っています。

平成26年度から産業保健三事業である

・地域産業保健事業

・産業保健推進センター事業

・メンタルヘルス対策支援事業

を一元化して業務運営しております。

労働者の健康確保対策が企業として重要な課題となっています。このような状況の中で行政・医療・産業保健の機関の連携により裾野の広い産業保健活動の支援を行っています。

支援センターは、労働基準監督署と同じ管轄区域で、18カ所の地域産保を設けています。地域産保では、50人未満の事業場を対象に定期健康診断結果の有所見者に対する医師からの意見聴取や長時間労働者・高ストレス者の面接指導等の産業保健サービスを無料で行っています。

両立支援事業について

―――ありがとうございます。まず、支援センターでの取り組みの中で重点事項からお聞きできればと思います。

柴田 平成29年度の支援センターが行っている事業の中で、一番の重点事項は、「治療と職業生活の両立支援」対策の普及促進事業ですね。働いている方ががん等を発症して初めて病気休職を取った方の38%が復職せず、退職しているという現実があります。支援センターでは、現在勤務している労働者の方が、がん等の病気になった場合に治療を受けながら働き続ける「治療と職業生活の両立支援」を行っています。また、労働局や東京都では、すでに離職した患者さんへ就労の支援を行っております。ですから、離職した患者さんが就労支援を受け就職した後、引き続き治療と職業生活の両立支援へ引き継ぐことが可能となり、裾野が広がる支援が行われます。

―――大変重要な事業ですね。働き方改革実行計画などでも「多様な働き方」を可能にする社会の実現がよく言われていますね。

柴田 はい、働き方改革実行計画の中でも「病気の治療と仕事の両立」について取組むこととされておりますが、当センターで両立支援促進員の無料派遣などのサービスを行っています。企業から支援のご要望を頂きますが、患者(労働者)にとっても企業側の視点でも大変難しい部分があります。

患者(労働者)の方が治療と職業生活を両立させるということは精神的、肉体的、経済的にも大変なことですが、企業側は制度の仕組みを考えなければなりません。

がんの放射線治療においては、術後出勤できなくなることもあり、フルタイムで働いていた時と比べて、労働能力が低下し評価が下ることに悩んでおられる方がいらっしゃいました。企業側が、制度の運用について、社員の方へ人事評価について十分に説明を行うことが必要だと思いました。少なくとも特別な労働者を雇うことではないということを前提とする必要があります。

支援センターでは両立支援の取り組みを行う事業者や社員等を対象とした意識啓発を図るための教育を実施しています。

また、産業医、産業保健スタッフの責任が益々大きくなってきており、それらの方々へ意識啓発も大変重要です。

※東京産業保健支援センターの両立支援に関する活動リンク(外部サイト)

 

産業保健センター事業としての研修について

―――なるほどありがとうございます。支援センターでは、様々な研修を行っていらっしゃいますね。 →研修の検索ページ

柴田 はい、支援センターでは、産業医・看護師や保健師・衛生管理者や人事労務関係者の方々などに、すべて無料で専門的研修を行っています。年間に、延べ200程実施しています。
研修の案内は、1月、4月、7月、10月にホームページへの掲載の他、登録をしていただければメルマガでお知らせすることもできます。ご興味ありましたらメルマガにご登録ください。 →メルマガの登録ページ

また、産業医向けの研修は、東京都医師会と共催として日本医師会認定産業医の単位を取得できます。

―――大変数多く行われているのですね。研修の内容は、年によって変わっていくものなのですか。

柴田 研修講師は、産業医・労働衛生コンサルタント・保健師・社会保険労務士・大学教授等の各専門的な知識を有する相談員が、産業保健の分野全般から関係法令の改正、社会的問題となった過労死問題、作業環境測定の機器の操作等の研修を実施しています。特に事業場規模が50人以上の事業場で義務付けられたストレスチェック制度については、制度の導入から集団分析の実施、職場環境改善の方法等を取り上げた研修を実施しています。

研修内容については、受講者にアンケートを実施して研修テーマを決める際に参考としています。今後とも産業保健スタッフや人事労務担当者に産業保健活動の支援となる研修を実施していきたいと考えています。

近年の産業保健の新潮流について

―――支援センターの活動について、事業者、人事労務担当者、産業保健スタッフの方への支援を幅広く行っていることがよくわかりました。近年、産業保健に関連して様々な動きがありますが、事業者の産業保健活動の内容等についても変化はありますか?

柴田 過重労働による健康障害により過労自殺した事件が大きな社会的問題となり、労働者の健康の確保対策を行うことは企業経営の根幹というべきものとなっています。支援センターでは平成21年4月からメンタルヘルス対策事業を始めており、企業からの依頼によりメンタルヘルス促進員が職場を訪問し、メンタルヘルス対策のための支援を行ったり、メンタルヘルス教育を実施しています。誰もがメンタルヘルス疾患となるリスクを持っています。ストレスチェック制度の目的は、メンタルヘルス疾患を未然に防ぐという1次予防として大変有効なものです。

労働災害防止計画を立てる手法として、リスクアセスメントの基づき、あらかじめ危険有害要因を排除するという考えが必要です。メンタルヘルス対策を講じる場合には「心の健康づくり計画」や「職場復帰プログラム」策定を行うことが必要と考えます。支援センターでは「心の健康づくり計画」や「職場復帰プログラム」策定に関してお手伝いをしています。

地域産保の登録産業医の多くの先生は開業医として産業保健活動の重要性の思いを強く持ち、お昼休みや平日の休診日に地域産保の活動を行っていただいており、大変感謝しています。

―――そうした産業医療に携わる方の支援や、企業の産業保健活動への支援が大変重要なものであることがよく分かりました。ありがとうございました。

続いて、主に企業向けの支援としての、地域産業保健事業での企業向けの支援やメンタルヘルス支援事業について、具体的にお聞きできればと思います。(近日公開する2に続く)

(東京都社会保険労務士会 新宿支部 永井知子 加藤秀幸 松井勇策)