企業の源泉に根差す新しい「女性活躍施策」「サステナブル」が産み出す急成長と本当の豊かさ B STONE株式会社

2021年7月10日


B STONE(ビーストーン)株式会社(https://amerivintage.co.jp/)は「Ameri VINTAGE」ブランドを筆頭に急成長している東京都のアパレル企業です。ファンのお客様の熱量が高く、新商品が発売されるとほとんどが即時完売となるといった、高い実績を生み出している企業として知られています。

B STONE社は、創業当時からサステナビリティ活動や女性活躍推進についても非常に力を入れていることで著名でもあり、今回はそうした急成長やファン層の支持を集めていること、SDGsやサステナビリティに注力していることの関係性や理由、また今後の方向性について、社長の黒石奈央子様にお伺いしました。

 

B STONE株式会社の組織・現在の注力課題・サステナビリティ活動との関わり

―――本日はありがとうございます。サステナビリティ活動や急成長を生み出す企業風土などについてお伺いしたいと考えております。よろしくお願い致します。

 

黒石様(以下、敬称略) よろしくお願いします。

 

―――まず、貴社についてお教えください。創業からの流れや、近年の状態などです。

 

黒石 弊社は、創業から6年ほどになります。代表の私は、前職もアパレル系企業に社員として勤めていたのですが、起業を志して最初は1人の状態から事業を始めました。幸い順調に事業は成長し、現在では50人ほどの社員数となります。

 

9割以上が女性社員であり、ひとりひとりが活躍することが欠かせません。女性活躍推進活動では、女性であることも個性として、自分のキャリアを決定し活躍できるようにすることを目指しています。また、会社としては育児や女性としての心身の問題などを含めできる限りの支援をすることを決めています。一歩進んだ女性活躍のあり方を社会に発信したいと考えています。

 

事業においては、アメリヴィンテージというブランドラインを中心としたアパレル事業を運営しており、近年は事業の多角化や、企業としての風土の形成、発信力の強化などを行おうとしています。また、創業当時からサステナブルな企業活動とは非常に縁があったものと考えております。

―――ありがとうございます。6年ほどで現在の規模に到達するというのはアパレル業界が全体としては市場が縮小傾向にあると言われる中で、非常に稀有なことだと思います。まずはサステナブルな活動についての話題からお聞きしたいのですが、当初からそういった企業活動は意識されていたとのことですが、そのことも成長の原因になったのでしょうか。

 

黒石 はい、そういう風にも言えると思います。弊社は現在では、通常は在庫の残存率が30~50%と言われるアパレル業界の中で、売れ残りが1%以下の状態を常に作ってきました。こうした状態は今までずっと変わらないことです。弊社の幹部会でもよりサステナブルな事業を目指すために検討を続けています。

 

最近進めようとしているのは、お客様のお持ちの弊社の旧商品を、入手されたいと思っていらっしゃる他のお客様に流通できるようなマーケットを弊社が介在して作ることができないか、ということです。

 

アパレルブランドで、販売元が介在して、お客様のお持ちの同一ブランドの商品を流通させる、という試みはあまり聞いたことがないものだと思いますが、とてもサステナブルな活動ではないかと思います。こうしたことが可能な状態であるということが弊社の力の源泉でもあると思います。

 

奇跡的な水準の売れ残り在庫の数字は、なぜ実現できるのか?

―――売れ残り率がそこまで低いのはすごいことですし、旧商品に対してそこまでのファンの方がいらっしゃるということも驚きです。何がそういった力を生み出しているのでしょうか?

 

黒石 一番大きな理由は、SNSなどを利用して、ひとつひとつの商品の魅力をお客様に伝え、それに対してファンのお客様同士が交流して魅力の伝達を深めて頂けている、情報やコミュニケーションの場が確立できていることだと思います。こういったことができているブランドは非常に少ないと言えます。その結果として新作情報なども丁寧にお伝えすることができ、ファンの方に発売を待っていただくような状態になっており、即時完売などに繋がってくるのです。

 

また、通常のアパレルブランドでは、製品に死に筋・生き筋を設け、売れることを予期している注力商品とそこまでではない、レパートリー増加のための商品を作っていることがほとんどです。こうした戦略は商品レパートリーを増やすことによって認知を高めるということでもありますから合理性はあるとも言えるので、もちろん否定はしません。

 

ただ、弊社の場合は今までにお話したようなファンの方の信頼が確立できていると言えるので、全ての商品を例外なく、ひとつのこらず価値を最大限に丁寧にSNSなどで紹介をしています。こうした広報をファンの方にも十分に見て頂き、ご自身で購入決定をして頂ける状態ができています。

 

 

 

「サステナブルである」ということの本質や本当の価値、B STONEが実現したいこと

 

―――なるほど、その状態は事業的に成功だと言え素晴らしいものだと思いますが、大きなサステナブルな価値を持っているものだとも言えそうですね。

 

黒石 弊社が考えるのは、「物が溢れていることが前提で、お客様はそれを選択する」という産業の構造自体が、基本的にサステナブルではないということなのです。もちろん弊社でも、服飾の原料には多くの天然素材やリサイクル素材を使っていますし、途上国の方への衣料の送付支援なども、企業規模から見ても非常に多くの量をの支援を行っているとは思っています。こうした活動に対してサステナブルであるというご評価も頂いています。しかし、それはあくまで本業のアパレル販売自体から見れば周辺のことですし、そのことをあまりに過大に捉える風潮は疑問です。サステナブルであるということを、もっと事業の中心に位置づけることができるのではないかと考えています。

 

つまり、生産側も物を丁寧に作り、それを少しも漏らさず丁寧に発信する。そこまでが我々の仕事なのだと思います。お客様もその情報をしっかりと受け取ることができ、魅力があるものを購入の判断ができる。当然、購入後も大切に長く使って頂けるでしょう。そして最小限の廃棄で流通ができる。それこそが、環境や持続性の点でも最もロスが少ないアパレル業界の在り方ですし、産業の在り方だろうと考えているのです。

 

弊社では、幸いにも今確立できているこうした状態を、今後も変えることなくもっと徹底し、購入後の再度の流通や、その後のお客様の情報の流通までをサポートし、私たちが心をこめて生み出した良い服を、長く大切に使って頂きたいと思っています。

 

「サステナブル」の新しい価値、本当の豊かさを実現する企業の仕組み

 

―――素晴らしいことですね。サステナブルということの一歩進んだ考え方だと思いました。こうした考え方や企業としてのあり方が広がっていけば、より良い社会、環境にも優しい社会ができるのではないかと思います。こうした戦略を成り立たせる貴社の企業風土や環境についてお教えください。

 

黒石 はい、弊社は現時点では、弊社のアパレルのファンの方が入社するような経緯を持つ場合が多く、そういう意味で、組織としての一体性は強い方なのではないかと思います。また、今までにお話したような「私たちが生み出す商品をひとつひとつ丁寧に扱う、全てのものを丁寧に大切にする」という考え方は行き渡っていると感じることが多いです。

 

デザイン・生産や、社内でメディアプロデューサーと呼ばれる事業関連の部署ではそうしたことが徹底できなくては弊社の価値が実現できません。しかし、それ以外の部署でも考え方としては同じようなことを基盤にできている状態になっていると思います。

 

たとえば先日経理部の人間が、飲み物にはなるべく紙コップを使わず、マイカップを持参するようなことを自分から始め、その方がおしゃれだということもあって自然に社内にも広まっていました。こうした、まず我々の商品を大切にし、それをお客様にも大切に伝える、そしてそうしたことを成り立たせるために、全てのものを大切にする、という精神性が中心にあれば事業は今後も拡大でき、良い状態が保てるだろうと考えています。

 

 

女性活躍推進活動の内容と革新性

―――女性活躍活動を、特に力を入れて行っているとお聞きしましたが、今お聞きしたような経営の仕方とも関係があるのでしょうか。

 

黒石 はい、弊社ではすべての商品の可能性を生かし切る、ひとつひとつの商品の魅力を引き出してファンになって頂き、ひとつも無駄にしない、という方針でやっていますが、これを実現させるには、ひとりひとりの社員に業務や責任を持ってもらって遂行しないとできないことです。

 

また、こういう一つ一つを大事にするということは女性的な感性と言えるのかもしれません。私は、女性であるということは個性であり可能性であると思っています。女性であるということはメリットも多くあります。たとえば、男性は女性に対して指導などがしにくいということはよく言われることです。女性であれば、女性に対しても男性に対しても指導をしやすいという長所もあります。それぞれのジェンダーを含む個性を生かすことが重要だと思います。

 

弊社では、女性であることも生かして本当に活躍した状態をつくるということと、特に女性として支援が必要な内容は一般水準よりも手厚い支援を行う制度を整備する、ということを目標に置いて、特に2020年から本格的に女性活躍推進活動を行ってきました。育児や女性としての心身についての支援制度を徹底して作り、また具体的な活用方法や事例含めて、専用の内部ポータルサイトを整備して広報を行っています。評価制度やマネジメントにおいても、キャリアの選択を含んで後押しできるように工夫を重ねています。

 

また、活躍している社員について、会社のYOUTUBEチャンネルがあり730万再生に達する規模になっていますが、弊社社員も多数出演しています。
活躍している姿や個性を見せることで社員にとっても推進力になってほしいということと、弊社で工夫している点を社会的に発信し、生き方や働き方の参考になるような企業になり、女性活躍の事例となっていくことができればという思いもあります。

 

 

 

今後の展望と、今の価値の先に実現できるもの

 

―――社員が本当に活躍され、風土についてもとても高いレベルで形成できている状態なのだと思います。貴社の力の源泉がさらに見えた感じがしました。今後の事業的な展望や課題で、特に企業の成長や管理に関することをお教えください。

 

黒石 あまりに急な無理な拡大を目指すことはしたくはありませんが、今後も拡大はさせていきたいと考えています。売上でいえば、現在は35億円程度ですが、100億円規模を現実的に目指したいと思います。企業規模がある程度は大きくならないと、社内のスタッフにもキャリアの様々な選択肢を与えることができないところがありますし、社会的な発信力も限定されたものになってしまうでしょう。

 

そうした中で、いま私たちが大切にしている価値をしっかりと伝えていくことが大切だと思っています。また、弊社は業界に限定された知名度は高いとは言えるのですが、業界を超えたところの認知が高くはないことが中長期的には大きな課題だと考えています。

 

私たちが大切にしている、ひとつひとつの商品やそれを購入いただくお客様とのコミュニケーションを大切にする、ひとりひとりが自分の個性を生かし自分らしさを表現して生きていく、という価値観は、決してアパレルに留まるものではないと思っているからです。それに、より広く発信することで、弊社の商品を大切に思って頂けるお客様が拡大していく可能性も高まることでしょう。

 

弊社の軸である価値観をさらに確立し、我々の力をより強くし、着実に拡大する。お客様とのコミュニケーションを大切に、さらに質を深めていく。こうしたことの先に、サステナブルな価値や、女性が本当に活躍することの価値を、さらに広く実現していくことができ、お客様や我々の幸せで豊かな生活や生き方を実現できるのだと考えています。そんな価値を実現していくことが、B STONEの今後の姿でありたいと思います。

 

 

 

取材した社労士より
~新しい次元のサステナブル活動と、ジェンダーの本質論に立った女性活躍推進

今回のお話をお伺いし、産業活動とサステナビリティは通常対立するものとして捉えられがちですが、価値が高い製品を理想的なコミュニケーションで顧客に届けられれば、事業活動とサステナブルな企業活動は完全に両立するのだ、という大きな気づきがありました。これはあまり世の中でも理解されていない、新しい高次元な事業のあり方であると思われ、B STONE株式会社のような理想的な先行事例がより広く認知されることが必要だと思います。

 

また、女性活躍推進活動においても、女性を男性と同じレベルの活躍をできるようにする、育児の支援をする、などといったよく意識されがちな視点を超えており、ジェンダーの本質論に立って、女性であることを個性の一つとして徹底して活躍を支援し、キャリアについて考える機会を持っているというところが非常に革新的なありかたであると思いました。活躍する社員の方が、大規模にメディアで広報され、企業ブランド含めて女性などのユーザーのファンを増やし、商品販促にも、社会への啓発にも効果が持ち得るということもまったく前例がないものであると思います。

 

当然、そういったことはやろうとしてすぐにできるものではありません。魅力ある商品を産み出すことができる研ぎ澄まされた感性と、それを商品や企業活動として具現化する洗練された組織や人が必要であり、その上での強い経営的な意志と、事業活動における一貫した地道な努力があってこそのものだと思います。

 

その日はちょうど、社内に写真にも映っているような子犬が放されており、社員の皆さん全員で大切にされていることが感じられました。観葉植物も豊富な素晴らしい社内環境です。
ひとつひとつの物や人を重要視する企業風土においては生命への慈しみが自然に生まれ、場のエネルギーになるのだと感じました。
そういう力が、高次元な、洗練された美の創出に繋がっているのだということを全身で感じることができた、稀有な機会でした。

(執筆 東京都社会保険労務士会 HR NEWS TOPICS編集部)