http://sr-shinjukushibu.jp/kijisakusei/ishirodojikanii001/
※:猪俣先生のインタビューは平成31年3月1日に行われています。
検討会からの情報は随時更新されますので、最新情報へのアクセスをお願いします。
順天堂眼科医師:猪俣武範氏
医療の発展に貢献し続けることをご自身の人生のミッションのひとつとして掲げ、
眼科医療の研究分野でご活躍をされています。
プロフィールの詳細
http://inomata-official.com/
主な経歴:
2012年 3月 順天堂大学大学院博士課程眼科学にて博士号取得(医学博士)
2012年 9月 米国ハーバード大学眼科スペケンス眼研究所へ留学
2015年 6月 米国ボストン大学経営学部卒業(MBA)
2015年11月 順天堂大学附属順天堂医院眼科学教室助教
2016年 4月 順天堂大学医学部附属順天堂医院病院機能管理室併任
2016年10月 戦略的手術室改善マネジメント講座 併任
―――今回、問題とされている働き方について、ご自身にもご経験がおありですか。
猪俣 研修医になりたての頃の3か月間は、布団で眠れなかったこともありました。もっとも、それが自分の成長のために必要なことだと思っていたので、特に不満もありませんでした。
現在においては、私が教育を担当する研修医に対して、そのような働き方を具体的に指示することはありませんが、研修医側の意欲によるところも大きいのが現状です。しかし、研修医に関しては、以前より労務管理が厳格化されたように感じます。
自己研鑽のための時間についての考え方・インターバルの確保
―――時間以外の点について、検討会で話し合いが継続している課題はありますか。
猪俣 時間外の労働時間と自己研鑽の労働時間管理についてです。専門性への深化のためには、医師の自発的な修練の場を確保することはとても重要です。
労働の概念の中で、OJTでの医師の教育と医療の発展のための研究との整合性をどのように考えるかについては、医療機関ごとの考え方と医師個人の考え方も交差する問題なので、自分も解決策が思いつきません。現在、検討会でも手待ち時間に対する考え方や自己研鑽に対する考え方については、結論が出ていません。
自己研鑽に対する時間については、厚生労働省から指針が出る予定と聞いています。
―――なるほど、難しい問題ですね。他に現在、検討会での決定事項はありますか。
猪俣 幾つかありますがここで特筆すべきことは、代償休暇の取得。連続28時間勤務の場合のインターバル9時間等の健康確保措置です。
インターバルの連続勤務時間についてはまだ結論が出ていません。
医師は、当直時などの仮眠中も緊張の中にいることが多く、労働の質と提供する医療との関係性に問題が出てくることもありますので、勤務日において最低限必要な睡眠を取ることは、医療の品質改善や安全確保のために重要と考えます。
第19回検討会 資料1より
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000482859.pdf
一層の工夫の方向性と必要性
―――コ・メディカル(医師以外の医療従事者)の方々の労働時間については、どの様なお考えでしょうか。
猪俣 コ・メディカルの方々については、ある程度シフト体制が現在でも有効に機能しています。個々の医療機関において個別に努力していくことで、法規制の範囲内での労働は可能ではないかと個人的には感じています。
―――医師には、シフト制は応用できないのでしょうか。
猪俣 シフトを組むことは可能ですが、例えば、救急患者が運ばれてくる。緊急オペになる。受け持ちの患者の容態が急変するなど、様々なことが病院では突発的に起こります。
自分の主治医に対応してもらいたいという患者側の要望もある。医師としての責任感もある。これを両立させるためには、如何にシフトを組んでも対応しきれないという現状があります。
診察を希望される患者を診ることは医者の義務でもありますし、単純に時間で区切るということが難しいのです。
また、診療科によっても労働は異なり、一般的な繁忙期についての概念も、当てはめることは困難です。人に関わることなのでいつが忙しいとか、見通すことも難しいです。
―――企業の働き方改革については、単なる労働問題ではなく、採用コストの削減や良い人材の確保など経営戦略の一環として認知され、取り組みが行われようとしています。ある求職者意識のアンケートでは、賃金よりも労働環境の良い企業を選択する割合が高いという結果も出ています。それを踏まえ、労働問題への取り組みについて医療業界における成功例や、企業における事例などで、参考になるものはありますか。
猪俣 コ・メディカルへの権限移譲、IoTの積極的導入など、将来的には向かう方向性は見えていると思いますが、医療機関ごとの特色を生かしつつの導入に関する汎用的なノウハウもまだ確立できていないと思うので、医療機関にとっては導入リスクも大きいでしょうし、コストが発生することなので、今のところ積極的な動きにはなりづらい印象です。
医療機関の活動に対して、
診療報酬など経営面からみてのインセンティブについては、
政府からはまだ具体的な方針が出ていません。
―――日本の医療を守るという意識をもって、国、医療機関、保険者、医師、患者、それぞれが当事者意識を持って考え、意識の転換を行うくらいのことが必要なのでしょうか。
猪俣 そう思います。患者様には、救急病院へのかかり方、近所にかかりつけ医を持つなど、ご協力をいただけることはたくさんあると考えています。検討会でもその点についての提言を行っています。
第15回検討会 資料2より
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000461784.pdf
情報の取得の仕方・検討会についてのご所感
―――関係各所での情報の共有は重要ですね。検討会の決定事項についての情報は、厚労省の議事録開示以外に入手手段はありますか。
猪俣 検討会の開催は公開で行われていて、マスコミ各社も出席されています。皆様が積極的に情報にアクセスして、正しいご理解を頂くことを願っています。
―――最後に、検討会の今後の活動予定と、検討会での活動を通してのご感想をお聞かせください。
猪俣 検討会は、本年3月末で活動終了予定です。その後については、運用状況をみながら5年ごとの修正が予定されていると聞いています。
課された問題は余りにも難しく、
時間も限られていましたので、
関係するすべての皆様にご納得のいくものにはなっているとは言え
ません。与えられた
5年間で、世界に誇れる日本の医療(
特に地域医療)が、持続可能で、
より良いものに進化することをより強く願い、私自身が主体的に行動したいと思うようになりました。
私以外の委員の方々もそうだと思いますが、医師のワーク・
ライフ・バランスについて、
積極的に考え発信していきたいと思います。
(執筆 東京都社会保険労務士会 HR NEWS TOPICS編集部 大橋 佐代)
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