日本初のピアボーナスシステムを開発したフラットな組織 Unipos株式会社(1)

2019年2月1日


<![CDATA[リモートワークなどの多様な働き方を推進する上で、従業員同士のつながりや企業文化の構築・浸透が不可欠になってきています。
今回は、日本初のピアボーナスシステム(※1)Unipos」(ユニポス)(※2)を生み出したUnipos株式会社様にその企業文化についてお話を伺いました。Unipos株式会社の代表取締役の斉藤知明様とFringe81株式会社のPR・マーケティングの朝妻千尋様のお2人がご対応くださいました。

※1 ピアボーナスシステムとは、金銭報酬を与える権限の一部を経営者から従業員に委譲し、従業員同士で報酬を送り合うことができる仕組み。ピアとは「仲間・同僚」の意味。同システムはGoogleなど海外の企業では既に導入され活用されている。
※2 UniposはFringe81株式会社が開始したシステム。その後会社分割によりUnipos株式会社へ承継。

壁のない会議スペースがフロアのど真ん中に

――― 本日はお時間をいただきありがとうございます。会議室はここでよろしかったでしょうか。フロアの真ん中で壁もない場所のようですが…。両側に従業員の席があり、会話も聞こえますし、本当にここでよろしいですか。

朝妻様 はい。ここが当社の会議スペースです。壁がないので周りの音が普通に聞こえます。真ん中に配置したのにも理由があります。

オフィス中央にある壁のない会議スペース

――― どうしてこのような配置になったのでしょうか。
朝妻様 当社は、従業員同士のコミュニケーションや相互信頼を大切にしています。どんな職種の人でも、どんな役職の人でもフラットになるように工夫をしているのです。他にも会議室はあるのですが、全面ガラス張りで、誰が会議をしているか周囲から丸見えにしています。

通りがかりの男性 こんにちは!はじめまして。田中です。

――― はじめまして。本日取材させていただく東京都社会保険労務士会と申します。

朝妻様 こちらは当社(Fringe81株式会社)の代表取締役の田中です。

――― 社長様でしたか。通りがかりにふらっと立ち寄った様子でしたので、社長様とは気が付きませんでした。壁がないのでどこからでも人が入ってこられますね。ご挨拶後すぐに社長様はどこかへ消えていきましたが、社長室はどこにあるのでしょうか。

朝妻様 社長室はありませんし、役員の席もバラバラです。

斉藤様 はじめまして。Unipos株式会社の代表取締役の斉藤と申します。

――― はじめまして。斉藤様ですね。本当にいろいろなところからいろいろな人が現れますね。

朝妻様 当社ではどの席にも壁がなくなるようにしているため、いろいろなところからいろいろな人が現れるように見えるのかもしれません。

斉藤様 役員も従業員に混ざってバラバラの場所に座っています。CTOはあそこで、CEOはあの辺で、CFOはここです。外部の人が見たら、誰が役員なのかわからないですよね。

役員と従業員が分け隔てなく座っている

社長室はなく、社長の席はコピー機の前

――― 役員と従業員が一体化していて全く目立ちませんね。役職者と従業員の席は誰が見てもわかりやすいように机の大きさを変えたり、壁で囲ったりと区別している企業様が多いと思うのですが、徹底してフラットです。

朝妻様 当社は社長席にも特徴があります。コピー機の前に社長席があるのです。

――― コピー機の前ですか。なぜそうしたのでしょうか。

朝妻様 コピー機は従業員がコピーを取りに来る際に必ず訪れる場所ですよね。従業員がコピー機のところに来た際に、従業員から気軽に社長へ話しかけやすいようにと考えた結果、コピー機の前になりました。逆にコピーを取りに来た従業員に対して、社長からも話しかけやすいですしね。

全員が1フロアにいる

全員が1フロアにいることにこだわる

――― コピー機の前は、普通に考えると従業員の座席決めの際に敬遠しがちな席ですよね。ひっきりなしに人が来て気が散るでしょうし。それでもコピー機の前の席にするとは珍しいですね。

朝妻様 座席以外にも、社長がふらっと従業員の席を訪れて会話することができるように、従業員全員が1フロアにいることにこだわっているんです。

――― 従業員はこのフロアにいる人達で全員なのですね。結構な人数がいると思うのですが、従業員が増えたら、他の階を借りたりはしないのでしょうか。

朝妻様 はい。従業員が増えてここも手狭になってきたので引っ越しを予定しているのですが、1フロアに全員がいることにこだわっていて、物件を見つけるのも大変なんです。

ピアボーナスシステム開発のきっかけは、段ボールでできた投票箱

――― 壁を作らないことを徹底して実践している企業様なのですね。日本初のピアボーナスシステムを開発するに至った経緯を教えていただけますでしょうか。

斉藤様 当社はもともと「発見大賞」という表彰制度があり、段ボールで作った投票箱を使って投票を行っていました。この発見大賞がシステムの前身となっています。

当社では、営業、エンジニア、バックオフィスなど職種の異なる人が複数のプロジェクトに携わっており、社員が増えていくと知らない人が増え、誰が何の仕事をしているかが見えにくくなってきていました。

また、社長が従業員を褒めるのは一般的な表彰制度ですが、一般社員が自分の隣の席の人を褒めていることのほうが職場の自然な光景ですし、なぜその人が選ばれているのか皆が納得できると思い、これを実現するシステムを開発することにしました。

ピアボーナスシステムの前身となった投票箱

 現実世界の職場で同僚が賞賛されている光景をシステム化

――― 職場の自然な光景をシステム化してしまうとは、すごい発想力ですね。このシステムは、相手にポイントを直接送る機能に加えて、それを見た周囲の人が拍手をすることでもポイントが送られる仕組みになっていますが、なぜそのような仕組みにしたのでしょうか。

斉藤様 現実世界がそうだからシステムも自然とそうなりました。AさんがBさんに対して「あの話きいたよ!すごいね!」と褒めているときに周囲のCさんやDさんは何をしているのかというと、「Bさん、すごいね!」と話に入ってくるのが自然な行動です。

更に、相手を褒めるのと同時にコーヒー1杯差し入れする感覚でお金も送ることができれば、「せっかくだから100円送ろうかな」という軽い気持ちで相手にお金を送ることができ、褒められた相手はお金も受け取ることができます。

システム化すればお金を送ることは簡単ですが、現実世界で相手にお金を送ろうと思うととても難しいですよね。

サンクスカードのようにお金が絡まないシステムを作ることもできたのですが、当社のシステムは感情報酬(人から感謝されること)をきっかけとして、それに金銭報酬を絡めることにしました。

お金を送る相手に対して「ばかやろう」というメッセージにはならないので、感謝の言葉とお金が自然に結びついているのです。

――― なるほど。現実世界を注意深く観察してシステム化に至ったのですね。他に工夫した点はありますか。

斉藤様  ピアボーナスのポイントがリセットされるタイミングに注意しました。ポイントを使わなかったとしても週単位でポイントがリセットされ、毎週新たに400ポイントが付与されるように設計しました。

月単位にすると月初の行動が忘れ去られてしまうので、行動が思い出せる週単位にしました。また、ポイントの繰越しができてしまうと、溜まったポイントを月末に一気に使うようになり、夏休みの宿題を最後にやるのと同じ現象が起きてしまいます。

日単位にすると、今度はポイントがリセットされたり付与されたりするのが忙しくて、システムが使いにくくなってしまいます。

週単位にすれば、その日の終わりの夕方5時くらいに仕事が一段落してポイントを送る、家に帰ってからほっと一息ついてから夜にポイントを送る、金曜日に今週を振り返ってポイントを送る、という自然な流れを実現できるのです。

「日本初のピアボーナスシステムを開発したUnipos株式会社のフラットな組織(2)」に続く
(執筆 東京都社会保険労務士会 HR NEWS TOPICS編集部 亀田 裕香)]]>