学校での「キャリア教育・職業教育」の進展と社会保険労務士の役割
2018年3月31日
社会保険労務士がキャリアと職業の教育を担う形で、学校教育での活躍の場を広げつつあります。
※トップ画像は、東京都社会保険労務士会 新宿支部での新宿区立四谷中学校での授業風景
近年、学校教育におけるキャリア教育・職業教育の重要性・推進策が、文部科学省や様々な国の方針においても示されています。社会保険労務士が、唯一の労務・社会保険の専門家として、働く場の仕組みや情報を包括的に伝えられる講師として、学校教育の現場に携わる事例が増えています。
「キャリア教育」とは、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」(平成23年1月中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」より)とされ、一人一人の発達や社会人・職業人としての自立を促す視点から、学校教育において積極的に行っていく方針が示されています。
参考: 経済産業省 キャリア教育 文部科学省キャリア教育
また、「職業教育」とは、「一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育」とされています。社会が大きく変化する時代においては、特定の専門的な知識・技能の修得とともに、多様な職業に対応しうる、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力の育成が重要であるとされ、様々な取り組みが行われています。
参考: キャリア教育・職業教育の課題と基本的方向性:文部科学省
社会保険労務士は、労務と社会保険に関する専門家であり、学校教育の中で、キャリア教育や職業教育を担うことのできる外部講師として、近年活躍の場が増えています。
全国の社会保険労務士会において学校教育を受託する動きがあります。東京都社会保険労務士会でも、東京都単位での組織から支部組織までの様々な場での公益的な活動として、あるいは社労士個人の働きかけにより、小中学校から高校・大学に至るまで、教材の充実が図られ、様々な事例が蓄積されています。
東京都社会保険労務士会には、23個の支部組織がありますが、そのうち2つの支部について、学校教育に関する活動の責任者である社会保険労務士に、現在の取り組み・教えている内容・大事にしていること等をインタビューしました。
(東京都社会保険労務士会 新宿支部)
対象:専門学校での授業が主・中学校での学校教育も試験的に始まっている。
担当の大山会員(社会保険労務士)へのインタビュー・教え方について
教材や内容としては、全国社会保険労務士連合会で作成された教材(下記画像)を使うことが多いのですが、必要に応じて工夫しています。また内容についても、平たんに話すと飽きてしまうため、たとえば年金受給月が2か月に一回なので、お祖父さん、お祖母さんからお小遣いがもらいやすいのはここだ、など、生徒の気を引けるようなエピソードを経験的に作ってきました。そういった様々なエピソードなどで興味を喚起して、給与や、社会保険制度について教えていますね。
(東京都社会保険労務士会 中野・杉並支部)
対象:中野区・杉並区の小中学校
担当の稲尾会員(社会保険労務士)へのインタビュー・教え方について
対象となる学校が小中学校だということもあり、言葉も含めていかにわかりやすく話をするかに工夫を重ねてきました。パワーポイントを作成していますし、小中学生の子たちは、働くことなどへのイメージはあまりないため、働くことの責任というところでは、従業員である自分がが寝坊をしたときはどうするか?などを寸劇などをまじえて説明する場合もあります。
2時間続けて授業ができるように時間を頂いているのですが、これは、①なぜ「働く」の? ②給与明細をみてみよう!! ③「働く責任」って!? ④「働くルール」って!? というテーマにそった一連の内容を行っているためです。特に、②給与明細をみてみよう!!では、子どもたちに異なる役職やアルバイトなどの給与明細書を全員に配って見比べるときは大盛り上がりです。
(情報提供:東京都社会保険労務士会 新宿支部 大山邦博 中野杉並支部 稲尾公貴 執筆:HR NEWS TOPICS編集部)